2011年10月24日月曜日

著作権を考える2

さて、先日耳に入った誤解にお答えしたいがその前に、
アトリエで考えている、著作権の理想的な在り方の最終イメージを書きたい。
ダウン症の人たちの持つ文化への理解と、人類の共同財産としての彼らの価値を、
認識するところに答えがあると思っている。
彼らの作品とその世界は、深く理解出来る人達で、共同で管理、
保護するのが良いと思う。
1人の作家としてよりも、彼らの共有している文化により多くの価値をおく事で、
一人一人が消費され、消耗されないようにすべきだ。
彼らは仲間としてお互いを活かしあい、調和して一つの世界を見せてくれる。
それは作品のみならず、彼らの生き方そのものでもある。
将来的にはこの文化全体を価値として、
客観性のある文化保護、作品管理の組織を作って行くのが良いと思う。

作品を販売したり、グッツを販売したり、デザインに使われたりして、
お金に換わる機会があれば、管理組織が預かり、みんなで、みんなのための環境を
創ることに使って行けばいい。
勿論、その際は作家の保護者の方も管理組織に入っていただいて、
一緒に考えられればいいと思う。
そうすることで、売れる人と、売れない人に分かれたり、
単なるお金を稼ぐという自立支援にとどまらない、
彼らの未来のための環境づくりが可能となる。

今の段階ではまだ、この様な理想を信じられる人は少ないというのが現状だ。
今年はいくつかお仕事を頂いたが、
今回は僅かではあるが作家本人に、お金が渡るようなかたちをお願いした。
その事で保護者の方達の希望にも繋がることを目指した。
先ほどの様な考えはその一歩先にある。
未だ権利すら確立されておらず、お金を稼ぐ手段も少ない人達だ。
まず、彼らも作業所の作業や仕事だけではなく、
自分の得意とする事で、正当に金銭を得る可能性のあることを、
保護者の方達にも認識していただく。
次の段階に行くには、そこから始めなければならない。

それぞれの企画によって、考え方も色々あっていいとも思う。

さて、本題の方だが著作権の問題というより、
アトリエへの誤解と言った方が良いかも知れない。
数年前に行った企画について、
作品を提供した保護者の方から、
その企画を通して入った寄付金はの扱いに疑問があったようだ。
実は、この件は何度も説明をおこなっているし、
文書でもすでに3度以上、詳細を伝えている。
保護者の方達もほとんどの方達は、ご理解されている旨を聞いている。
もしかすると、1人か2人の方がずっと拘っておられるのかも知れない。
まるで問題を感じておられない方々にまで、
何度もこの件を伝えているのは、私達としても申し訳なく思っている。
今後はアトリエとしての考えは、僕自身はこのブログで、
その都度、すべて経過を書いていくことにする。
考えは明晰にする。
それでも疑問を持つ方は、憶測するのではなく直接聞いてもらいたい。
ここまで書いて来た考えも、全員が一致して賛成していただかなくとも良いと考えている。
アトリエ・エレマン・プレザンとして作品を社会に出す場合、
この考えに賛同する人の作品を提供するというだけだ。
一つの企画に対して、アトリエの考えに賛同する人が、作品を通じて参加すればいい。
反対する人の作品を無理やり出すということはしないし、
みんなにこの考え方を強請することもしない。
どう考えるかはそれぞれの自由だ。

同じ意識を持って、協力しあえる人達と、作品を伝えて行きたい。
単純な話だ。

すでに聞いている方には繰り返しで申し訳ないが、
誤解に答えさせていただく。
アトリエでは、平日のクラスと外でのイベントや対外的なお仕事を、
ダウンズタウン実現のための土壌作りとして位置づけている。
「プレ•ダウンズタウン活動支援基金」として口座を持っているが、
様々な方達からご寄付を受けている。
チャリティー等の企画をおこなっていただく場合、
すべてこの位置づけでご寄付を頂くかたちをとっている。
今のところこの口座へのご寄付以外のかたちでは、
作品を通じても収益を得たことはない。
ここに書いている企画に関しても、
助成金という枠組みで、この寄付口座にお振り込み頂いた。
ご寄付に関しては年末に会員向けに、
会計報告をおこなっている。(必要な方にはお渡しする)
平日のクラスにしろ、外での様々な活動にしろ、
ダウン症の人たちの可能性を示し、応援して下さる方や、
企画等と出会うきっかけになったり、活動自体が彼らの希望にもなる。
そういった活動の必要性を感じて下さる方が、
ご寄付というかたちで応援して下さっている。
ご寄付に関してはそれ以外のことでは使われてはいない。
絵画クラスの会計は全く別であり、
ご寄付を使わせていただくことは一切ない。
まず、このことをご理解頂きたい。

平日のクラスと外での様々な活動には、
彼らの未来と可能性の為に、ご寄付を募って来た。
ダウンズタウンに是非繋げて欲しいと、希望を託して下さる方や、
ビジョンを共有して下さる会社や企業もある。
そういった企業からチャリティーの企画があった場合、
私達は上に書いた様な意図をご説明し、
どういったかたちでご寄付を使わせていただくかを説明した上で、
お仕事を進めている。

あまりそういう言い方はしたくはないが、
あまりにも誤解している人の見解が浅いので、
あえて言うが、こういったビジョンに協力したいという方達が、
企画を作って下さっているのであって、
個人の収入になるためにあるお話ではないと言うことを忘れないで欲しい。

ここに書いた企画も「プレ•ダウンズタウン活動支援基金」へ
助成金としてご寄付頂くというお話で、
その繋がりをみんなが認識して楽しく、夢を共有出来るように、
アトリエの作家の作品をデザインに使っていただいた。
そのことは事前に了解も得ているし、その後も同じ説明をして来たはずだ。
にもかかわらず、作品がデザインに使われ、
その謝礼がアトリエにそのまま入って、作家に渡っていないという、
誤解があったようだ。

個人で作品を売ることで収入に繋げたいと考える方は、
ご自分でそのようにすれば良いのだ。

何度かこの様なことはあった。
でも共感して下さる方もいるし、喜んでくれる保護者の方達や作家もいる。
というか、ほとんどはそういう方達だ。
そして何より、一つ一つが彼らの可能性に繋がっている。
だから、こういった活動は続けるし、レベルを下げることもしない。
参加される方は最初にここの部分を理解した上で、ご参加頂きたい。
もし、反対するお考えをお持ちなら、
アトリエはその考えを否定するものではないので、
アトリエの提案する企画以外でやっていただきたい。
共感出来なければご参加頂くことは出来ない。

これも本当は言いたいことではないし、
理想としてはいうべきでもないことだが、
平日のクラスの場合も外での様々な活動の場合でも、
貴重なご寄付を使わせていただいている事もあり、
スタッフも人件費を頂かずに働いている。
これまであまり個人的な感情は語らないようにして来たが、
これはこれから多くの人が関わって来たときのために言わせていただく。
誰かや何かのために一生懸命、ない時間を削って無償で働いた仕事を、
「自分達の利益のために」等と勘ぐられて、
良い気持ちがする人間がいるだろうか。
その様なことを思ってもみないで純粋にやって来た人間なら、
確実に不愉快に思い、もうやらないと思う人も多いだろう。
特に福祉的な場に良い人材が集まらない原因はそこにある。
良い志とセンスを持った人間が何かをしようとしても、
保護者の方や周りの人がこの程度の認識だったら、
諦めてしまう人がほとんどだろう。

幸い僕自身はそんなに弱くも繊細でもない。
だから多分、可愛げもない。
いつかみんなのためになるなら、信じたことはやり抜くまでだ。

ただ最後にこのことだけは書いておくが、
アトリエ・エレマン・プレザンに所属している作家の保護者のかたちは、
本当に理解の深い方達が多い。
ここで書いた方は多分、1人か2人、多くても、3、4人の方だろう。
これは人づてに聞いた話だ。
直接、その方からお話があった訳ではない。
多少の不満として、お喋りとして話しただけかも知れないので、
僕としては人を特定したくはないし、どなたか知る必要もない。
直接、お話を聞いた訳ではない。
もしかしたら、こちらに言いたくても言えない雰囲気もあるのかも知れない。
だから、考え自体は否定したが、
そういう思いを持つ、持ってしまうと言うことは受け止めようと思う。
自分が信頼されていないと言うことでもある。
それは力不足と言うことだろう。

それとは別にそういう考えに至るということも、分からなくはない。
最初にも書いたように、権利すら認められず、
お金を得る可能性すら示されてこなかった背景があるのだから。
まず、疑うこと、主張することが当然だったのかも知れない。
これからは時代も変わって行く。
まっさらなめで、彼らに出会い、認識する人達も増えてくるはずだ。
そういった人達との出会いを大切にしよう。
そういった人達が、「こういう事に関わると大変な事になる」と
思わないように周りも変わって行こう。

一応付け加えると、
以前、ある展覧会で展示されなかった人について、
その人がアトリエに反対意見を言ったからだという、
心ない噂をした人が居たが、そんな事は一切ないと断っておく。
作品を選ぶとは、その様な個人感情が入り込むほど甘いものではない。
あまり人の仕事をバカにしないほうがいい。

だから、ここで書いた意見の方が、どなたかは知らないが、
どなたであれ、アトリエに参加されている以上は、
いつもと変わりなく同じ仲間として認識させていただくし、
展示その他においてもまったく変わりはない。

当たり前のことばかりだが、あえて書かざるを得ないお話を、
書かせていただいた。
百も承知の方々には、そんなに気持ちの良いお話でもなかったので、
申し訳なく思っている。

でも、そういう一つ一つを前向きに乗り越えて行った先に、
本当の理解や共存があると思う。
聞きたくない意見から逃れてはならないと思う。
みんなでマイナスもプラスに変えて行けたら素晴らしい。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。