2012年2月13日月曜日

今、このときを大切に

昨日も雑誌の撮影が入った。
今は調子の悪い人も多い時期なので、いつも以上に気を遣う。
万全とは言えないまでも、作品もいいものが描けているし、
まずまずのクラスをお見せ出来たのではないだろうか。
しんじ君が「サクマさんってこんな人なんだよ」と、
お客さんに説明しているのが面白かった。
僕がふざけているところを、人に誤解されないように配慮している。
いつもそうだけど、彼らは本当に分かっている。
だいたいのことは察知している。

最近はますます思う。
彼らも、色んな場所で無理したりストレスを溜めていて、
辛い思いをして、ずっと我慢している。
そして、このアトリエまで頑張って来て、やっとホッとする。
そんな彼らに、少しの時間でもいい気持ちでいて欲しいし、
自分のリズムを取り戻して帰ってもらいたい。
一回の教室でも、疎かに出来ない。
遠くからはるばる来て下さる方もいる。
ここだけが、行き場所と思っている人も多い。
だから、本当のことがしたい。みんなに活き活きしてもらいたい。
そのために出来ることは短い時間の中であれ、
どんなことでもしなければならない。
エネルギーというものが、目には見えないけどある。
使いすぎると生命が消耗する。
でも、消耗した人が目の前にいたら、
僕は自分の中に蓄えたエネルギーを全部あげる。
それでも、ほんのちょっとだけ、良い流れが出来るだけだ。
人に良い気持ちになってもらうなんていうことは、
たやすいことではないのだ。
だからこそ、やりがいがある。

それにしても、昨日のしんじやしゅうちゃんの存在は素晴らしかった。
こういう人がいて、来た人は「いいなあ」と感じるのだ。

「場」というものは、人が居て初めて良いものになる。
どこかいい場所、もう一度行きたい場所を想像すると、
必ずそこに誰々がいる。あそこにはあの人がいる、と。
そういう人が居て「場」は出来ている。

アトリエでも、てる君やハルコさん、プレでのアキちゃん。
こういう人達が、主みたいになっていて、
「ようこそ。ここはこんなところだよ」と伝えてくれている。

前回、共働学舎のノブちゃんのことを書いた。
彼女もそんな存在だった。
あの場所をイメージする時、ノブちゃんのことを思い出す人は多かったと思う。

人こそ最大の財産。

一回、一回のアトリエをとことん大切にしていきたいと思う。
僕達の一生はそんなに長いものではないのだから。

先日もハルコと何気なくお話ししていると、
彼女が亡くなった人達を一人づつ思い出している。
しばらくして「どんどん減っていくね」とつぶやいた。
僕はすぐに「最後はハルコとドキンちゃん(彼女が好きなゆりあのこと)だけになったりして」と言うと、ハルコは大笑いしていた。
だけど、本当にその時は深く共感した。

単純なことだけど、精一杯、悔いのないように生きなければ。

ここまで会いに来てくれる人達に対しても、
いつも何か持って帰っていただきたいと思う。
何か得てもらいたい。もう二度と会うことが出来ないかも知れないのだから。
いつでも、これが最後かも知れないと思って、
本気で向かっていくようにしている。
見学者に対しても、色々注文をつけるようだが、
すべては少しでも良い場面を見ていただきたいからだ。

ましてやわざわざ、話を聞きに来た人に対しては、
持っているものはみんなあげなきゃと思う。

そんなこと思わなくてもいいのかも知れないが、
「ブログ読んでます」とか言われると、
じゃあ書いてないこと話さないとと思ってしまう。

今、この瞬間はもう2度とやってこない。
だからいつも大切に大切に、慈しむように生きていこう。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。