2012年7月21日土曜日

素直に

急激に気温が下がって今は寒い位だ。

アトリエのこと、活動のこと、作家たちのこと、
関係性のこと、場のこと、色々書いてきた。
一言で言うと生き方、在り方こそが問題なのだと思う。

育てる、とか教育ということでも、自分の生き方が反映される。
仕事も無論。

ダウン症の人たちの感性や、在り方を考えること、
一緒に何かをすること、このアトリエでの実践も、
結局のところは、私達はどのように生きるべきなのかという問題に収斂される。

アトリエで色んな人に会う。
活動を伝える為に外でも様々な場所に出る。
そこでも色んな人と出会う。たくさんの人達をみてきた。

そして、制作の場に入ると、そこには人間の内面ばかりでなく、
関係性や社会や生き方の縮図がある。

場に入り、場を良くすることは5人いれば、
5人ともが同じ使命として感じていなければならない。
場に入った以上、良くすることが与えられた役割であり条件だ。
これは作家やスタッフだけでなく、お客さんもそうだし、
絵から何かを感じようとする人達も一緒だ。

それはまさしく人生だ。
生まれて来た以上、少しでもこの世界を良くしなければならない。
自分がここにいる、ということはこの場を良くすることを意味するべきだ。

良い意味で場において力を持つ人がいる。
場を良く出来る人が。
見学者でも作家でもスタッフでも、そこに居る人が全員場を創っている。
僕は時々「現場力」と呼ぶこともある。
本当の意味で現場力のある人は100人に1人もいない。

でも、現場力のある人を見ていると分かるが、共通する条件がある。
これも簡単に言おう。
現場力のある人間とは素直な人間だ。

何も怖がらず、恥じず、隠さない素直さ。
感覚や感性がここでの重要なテーマだったが、
感覚や感性は素直になった時に動き出す。
人間や生物の根本に「快」「不快」があると言ったが、
この快、不快が敏感に分かるのも素直な心と身体があればこそ。

素直であれば何でも出来る。
素直であれば限界もない。

場に入るとそのことが良く分かる。
いつもいつも、より素直になるために「場」があるのかも知れない。

ここへ来る学生達も素直になることを学んでいると思う。
素直になった時にその人本来の能力が発揮される。

素直さがいかに力であり、いかに強いものであるのか、
僕は20年近くも感じ続けている。

人類はもう一度素直さを取り戻せるだろうか。
そんな大それたテーマはいいとして、
せめてここで関わった人達が少しでも素直な気持ちを自覚出来るような、
場づくりをしたい。素直な良い人間がたくさん育っていく。
そんな場所にしていきたい。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。