2012年10月15日月曜日

あきらめないこと

今日も色々と打ち合わせがある。
ここでも書くべきことはたくさんあるのだけど、
今日は何よりも優先してこのテーマで書く。

良い意志を持ってここに来てくれる人、
真っすぐに何かを求めてこのささやかな場までたどりついた人。
純粋な志を持った人達と出会うことが多い。

そんな将来有望な人達が、途中で挫折したり失望したりすることがないように、
出来ることなら応援していきたい。

人はどこまでも強くなる可能性を秘めているけれど、
脆く弱い存在でもある。
1人の人間の可能性は計り知れないが、
1人の人間では乗り切れない場面がたくさんある。
手を取り合って協力していくことが必要だ。
せっかく良い意志を持って歩み始めた人が、志なかばで諦めてしまわないように。
孤独を感じていまわないように。

良い意志はどこかで繋がっている事を忘れないで欲しい。
いつかはつうじることを忘れないで欲しい。
人に左右されず、古い習慣に足を引っ張られず、
自信を持って突き進んでいくこと。
批判や非難や無理解や、人の噂や誤解に、気をとらわれないこと。

そして、正しいことをおこなおうという人達に必要なサポートをしていこう。

少なくともその意志が強固なものになるまでは、
強い協力者や理解者が必要だ。

そういう人達を応援する気持ちを忘れてはならない。

一方で真剣に作り上げて来た場を、覗き半分で見に来る人達もいる。
悪い気持ちが場を汚すので、入れないことも多いが、
分かった上で見せる時もある。
そんな気持ちで見て真似しても、何も出来ないことはめにみえている。
外から情報を集めて考えだけ真似しようとする人達もいる。
こういう人達は結局のところ、やってみるしかないのだと思う。
やってみれば、分かるだろう。長く続けてみれば分かるだろう。
何かやっているように見せかけようとしても、いつかは分かる。
人はそんなに愚かではない。例え騙せたとしても、自分が楽しくはなれないだろう。
だから、こんな人達はほっておいていい。
言うまでもないことだが、現場は真似出来ない。
嘘だと思ったら試してみればいい。
それから、こんな人達に騙されることがないようにご注意いただきたい。

人のこころを相手にするのだから、責任はしっかり持つことだ。
間違ったものが普及することは人の魂を傷つける。

前にも書いたが、本当に真摯に学びたいと思う人には、
全部教えていいと思っている。

あるとき、こんなことがあった。
ワークショップの時に知り合った保護者の方と話していると、
子供が小さな頃はとても良い絵を描いたのだけど、
学校へ入って絵を教えられてから、まるで描かなくなってしまった、
という。作業所へ入ってからも絵の時間に描くことはなかった。
そんなある日、その作業所へ絵の指導に新しい人が入ったという。
その人がきてから、彼は再び絵を描くようになった。
その人と出会えて本当に良かったというお話だった。
それくらい、人は大切だ。
そして、続きだけどその指導者は僕達のアトリエにずっと前、
訪ねて来た人だった。
絵の指導をする事になったのだけど、
作業所の方針とズレがある、描く人達にとってどうしてあげるのが適切なのか、
というような相談を受けた。
やさしくとても良い人に見えたが、自信がなさそうだった。
アトリエを見せて、作家たちが活き活きと制作する姿から感じとってもらった。
色々とお話もした。

もし、あのとき彼の見学を断っていたら、と考える。
良い人間がいても、その人を応援する人がいなければ次に繋がらない。
種があっても、誰かが水をあげなければ実らない。
私達の社会はみんなで協力して水をあげることをしていない。
そとにいる子供達をたくさんの大人の目で育てるという、
当り前のことをしていない。
長い目で見ると、将来そのつけが回ってくる。
今すぐに役にたたないことでも、10年、20年後、
何かになることはいっぱいあるはずだ。

良い志を持った人達は決して諦めてはならない。
今、自分のしていることが理解されなくても、いつか伝わるはずだ。
時間はかかるし、時間はかけるべきだ。
続けること。ブレないこと。

あきらめないでほしい。
仲間はたくさんいる。そしてこれからも増え続けるだろう。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。