2013年1月7日月曜日

賭けること

さてさて、平日のプレクラスも今日からスタートです。
またみんなからお正月の話が聞けると思います。

荷物の整理がまだまだだ。
アトリエと待合室は片付いたけど、今度は仕事部屋をなんとかしなければ。
二階の生活スペースはもともと狭いので、多少、行き場のない荷物を置いて、
寝る場所さえあれば散らかっていてもいいかな、と思っている。

昨日の日曜日クラスはメンバー全員が揃ったので、素晴らしい勢いだった。
場の良さや凄さは言葉にできないのが残念なくらいだ。

掃除をしながら、自分の呼吸を取り戻す。
散歩しながら考える。
コーヒーをドリップしながら、リズムに乗る。

場においては間合いが命だ。
間を合わせるだけではなく、間をはずすことも知らなければならない。

すべてがあまりに自然になっていく。

僕はお酒をほとんど飲まない。
今後は分からないけど、そんなに飲むことはないと思う。
酔わなきゃやってらんない、という人もいる。
お酒を飲まないで何が楽しいの?と聞かれることもある。
楽しいことはいくらでもある。
でも、僕は酔わない訳ではない。
多分、音楽を聴いて酔う。
最近は夜、ピアソラを聴く。
どんなジャンルでもランダムに聴く。
音楽に関してだけは体系を知りたくないし、勉強とは無縁でありたい。
ピアソラを聴くのであって、タンゴを聴く訳ではない。
ボブマーレーを聴くので、レゲエを知りたいのではない。
ジョビンを聴く。ボサノバが何かなんて知りはしない。
ただ、音楽が身体に入ってくる。

酔うか、酔わないかということで言えば、
普段の僕は酔ってはいけない立場にいる。
場を見るとき、大切なのは作家たちとの一体化なのだけど、
完全に一つになってしまってはいけない。
絶えず、どこかで醒めている必要がある。
描く人が良い状態に入り、気持ちよくなる。
その状況を創っていく為には、こちらは一緒に気持ちよくなりながらも、
最後のところでは、とどまっていなければならない。
そのバランス感覚が重要だ。

作家たちは本当に良い状態に入ると、自分すらなくなっている。
僕達は一瞬はそこへ入って、共感しつつもすぐに戻って来て、
作家がそこに居続けられるように、冷静な判断をしなければならない。

だから、実は本当に作家と一体になっている時は、
僕の場合、一人でいる時だ。
一人になった時、最後の一線を越えて彼らと一つになる。
でも、一人になった時に本当に繋がるという経験がなければ、
彼らを深いところで理解することは出来ないし、
その結果、場を共有している時に、適切な動き方が出来なくなるだろう。

場に深く入ることと、一人になることは同じくらい大切なことだ。

酔うことと、もう一つ、賭けるということを書いてみたい。
僕は賭け事をしない。博打をしない。
でも、賭けるということを否定しない。
むしろ、賭けることがどれだけ必要か知っているからこそ、
ある意味で人生を賭けている。人生自体を賭けているのだから、賭け事はしない。

賭けることが出来なければ、賭ける勇気がなければ、
何一つ生まれない。
ケチな人間はいやしい。ケチというのは何もお金に限ったことではない。
リスクを背負わない、賭けることを避けて、無難な方を選んでばかりいる人間。
自分さえ良ければいい、この世には損か得かしかないと思っている人間だ。
僕はなるべく損したということを言いたくない。
得したということも言いたくない。
それから、無駄という概念も自分の中から消しさりたい。
損したとか、得したとか、あれは無駄とか思う度に、
自分はケチくさい人間だな、と感じる。

損得を超えて物事を見る。
無駄と思うことは、
合理的に意味のあることだけに関わりたいという弱さであると知る。
ケチな心を捨ててこそ、大きな勝負が出来る。

変わる時には痛みを伴う。
何かを得る為には、何かを失う。
それでも、新しくなっていく。とどまらずにのびていく。
賭けること、賭けてみることを忘れてはならない。
負けること、失敗することも避けてはならない。
恐れてはならない。
ただ、どんな状況に追い込まれても、
言い訳したり責任を他に押し付けてはいけない。
それが賭けるということなのだから。
自分が結果に全責任を負って、決して後悔しない覚悟を持つこと。

僕自身も絶えず、賭けて来た。
行かない方が無難な状況はたくさんあったし、
今のままでいたいとまったく思わない訳ではない。
でも、そこで勇気を出して賭けることで人は大きくなる。

このタイミングで三重に行くことは、よし子にとっても賭でもある。
もちろん、送り出す僕にとっても。
それでも、先に進まなければならないし、やるべきことというのがある。
ミッションという言葉がある。
一人一人が自分の使命をはたしていく。それが大切なことだ。

いつか、誰かや何かの為になるのなら、
今の状況を少しでも改善出来るのなら、思い切ってふみだそう。

何も大きな話ばかりではない。
例えば、僕の場合で言えば、日々のアトリエの中で、
勝負の場面、賭ける局面などいくらでもある。
場とはむしろ賭の連続だと言える。
ここでは何かの為に、良くする為に賭けるのであって、
自分を守っている暇などないのだ。

今日も実は違うことを書こうと思っていて、こんな内容になってしまった。
これまでは過去に経験して自分なりに結論が出ていることを書いて来たが、
今は、それこそ現在進行形で書いている。
まだ、僕の中でも答えが出ていないことも書いている。

変わっていくかもしれない。その都度、書いていきたいと思う。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。