2013年9月6日金曜日

秋の気配。
この季節は僕にとっては寂しい感じがする。
でも、しみじみして楽しかったこととかを思い出したり、
大事な時間になったりもする。

外での仕事や打ち合わせが多くなってきて、
なんだか話すことが仕事のような変な気分だ。

さっき、喫茶店で稲垣君と遭遇。
彼とは本当にばったり会う確率が高い。
合宿後、最初の出会いだったので色々話した。

いろいろあるけど、いつも本当に思う。
僕のところに来てくれている若い人達。彼らが一番の仲間であり理解者なのだと。
純粋だから裏切れないなとも思う。

稲垣君は今、色んな場所で撮影しながら、どんどん新しいものに向かっている。
真剣に学んで自分を磨こうと挑戦を続けている。

話していておっと思ったのは、
彼が自分を磨いて行こうと思った動機についてだった。
良いことを聞かせてもらったと嬉しかった。
アトリエに来て、制作の場を見て、彼が気づいたこと。
それは、人は裸で存在していて、それだけで美しくなければならない、
ということだった。
どんなに着飾って、武装して、自分を誤摩化しても、
場に入って通用するものではない、と。
彼はアトリエで自分が通用しないと感じたと言う。
その悔しさを忘れないで、人間として自分を磨きたいと思ってやっていると。

彼の気づきは極めて本質的だ。

そして、制作の場での経験がそんな風に、
自分を育てて行くことに繋がってくれているなら、
これが本当に大切なこの場の役割の1つだと思う。

だからこそ、僕達は日々、真剣勝負だ。

彼が鋭く見抜いてくれていたように、
場においては、いっさいのウソや誤摩化しが通用しない。
言い訳しても無駄だ。
場に入った瞬間に、座った瞬間に、立った瞬間に勝負は決まってしまう。
ダメな場合は何をやってもダメだ。
逃げも隠れも出来ない。

僕達は捨てて、捨てて、裸になって場に立つ。
真っ正面から本質に向かって行く。

怖いことだし、厳しいことだとも言える。
でも、だからこそ楽しい。

逃げも隠れもせず、ここにいる。
その正直さがすべてを良くしてくれる。

せっかく生まれてきたのだから、
お金を貯えることや、地位や名誉を追い求めることに価値をおくのはつまらない。
権力にしがみついたり、媚びたり、恐れたりしてるだけで終わるのはばかばかしい。
威張ってみても、チヤホヤされても虚しさは消えない。

せっかく生まれてきたのだから、美しくありたい。
美しさは強さと共にある。
いまここで、真っすぐ立って、事物を慈しむ。
そうしてみると、他に何もいらなくなる。恐れもなくなる。

媚と恐れとプライドを捨て去れば、人は美しくなる。
制作の場ではそんな姿で向き合わなければならない。

明日もみんなのと真っすぐ繋がって行こうと思う。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。