2014年2月21日金曜日

個性

よい天気ですね。
またしばらくブログの更新が出来ないかも知れないので、
今日は急ぎで書きます。

ずっとずっと、一人一人のこころと向き合って来た。
こころ、それも心の深くで動くもの。
それは「気持ち」のもっと奥にあることだし、
そこから創造性や自発性というものが動き出す。
そういう場所に触れて行くのはなかなか難しくて、かなりの繊細な手つきが必要だ。

こういうことを続けて来て、目的や動機というものを考える。
僕が一番目指しているのは人が自由になること。
その人らしく、自分自身になってもらうこと。
言い換えれば、個性ということだろうか。
個性というと簡単に聞こえるが、これが本当に困難なことでもある。

一人一人のリズム、ペースを取り戻す、ということはなかなか難しいことでもある。

今、例えば学生達と話したりしていても、ほとんど個性を感じられない。
個性とはちょっと変わっているとか、
人と違ったことをしてみるというような次元の話ではない。
その人がその人以外の何ものでもないということだ。
僕が向き合って来たような人達は一般的には障害を持つ人が多かったが、
彼らは個性を引き出しやすい。
それに比べて最近の一般的な人達は、ほってもほってもなかなかその人が出て来ない。
感触が薄い。人というのは確かな形を持ったもので、叩けば響く。
そういう人の形が感じられなくなっている。
いくら話していても誰と話しているのか分からない。

何故こうなるのかと言うと、その人が他の誰でもないその人で居続けることは、
困難に直面することでもあり、かなりしんどいことだからだ。

それでもそこに立ち向かい、逃げなければ、本当のその人が現れる。
その時、始めて人は輝く。個性こそが普遍だ。

その人の素晴らしさや美しさを見極めることが、僕の仕事の大半の要素だ。
これは人の形、人の個性を見つけて、それをそのまま出してもらうということだ。

さて、女子フィギアスケート、ご覧になった方も多いと思うが、
いやー、素晴らしかったですね。いい意味で予想外の展開でした。
浅田真央選手につきますね。
なぜ、スポーツやオリンピックを見るのかと言うと、
ああいった場面に出会うためでしょうね。
あらためて、浅田選手の底力、凄みを思い知らされて、
やはり希有な人なのだと感じました。
あくまで競技なのでこれを言ってはいけないのですが、メダル以上です。
金メダルは4年に一度、誰かはとるけど、ああいう演技はほとんどないと思います。
浅田真央選手の凄さはやはりオンリーワンの存在にあると思います。
他の誰も出来ないことをやってのけたのだと思います。
だから、僕達は浅田選手の何に感動したのかと言うと、個性だと思うのです。
大技を沢山決めたから凄いのではなく、そのようなプログラムで挑もうとした、
その動機が彼女以外の誰でもない個性だからだと思います。

個性を実現するということは、ここまで人を感動させることであると同時に、
このくらいの困難を伴うことだと思うのです。
僕自身、最近元気が無かったので、月並みな言葉ですが勇気をもらいました。

世界中が注目するあのような大舞台と、
僕達が生きている人生という小さな舞台とでは違いもあるけれど、
本質は同じだと思います。

現場に帰り、一人一人が自分らしく生きて行く手伝いが少しでも出来ればと、
気持ちを新たにしました。

余談ですがキムヨナ選手も本当に素晴らしかったです。
動作のすべてが美しくて気持ちがこもっていました。
表情も良くて感動ものでした。
スポーツ性よりも芸術性が凄い選手でした。
そして、こころも強い。
演技全体の素晴らしさ、美しさは一番ではないでしょうか。
個人的な好みで言えば、キムヨナ選手のように内に秘めた表現が好きです。

でも、みんな良かったですね。
頑張って生きて行こうと単純に思いますね。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。