2014年10月10日金曜日

何も知らない

またまた台風が近づいている。
今度はかなり大きいようで心配だ。
明日から、土日のアトリエがひかえている。

空もどんどん遠くなって行く。
虫の声、鳥の声も遠くなって行く。
秋から冬にかけての乾いて冴えた感覚も好きだ。

季節を意識するようになったのは、
僕の場合はやっぱり制作の場を見て行く中でだった。

作家達の作品も変わって行くし(特に色)、制作に向ける意識も変わる。

僕達スタッフに必要な動きも当然変わって来る。

順応していくということはいつでも大切だ。

自分たちよりもっともっと大きなものが大半を占めていて、
ほとんどはそこで決まって来る。

大きな流れを知って順応して行くためには、謙虚さが最も必要だ。

自分は何も知らないという自覚。
何も持っていない故に、今起きていることを感じようとする。

目の前の事物は動いているし、全く知らない何ものかなのだ、という感覚。

先月、三重で過ごしていたとき、近くにある大王崎まで散歩する日が多かった。
真っ青な海。どこまでも広く、深く。
波の音は途切れることはない。

目の前に無限が佇んでいることを自覚したとき、
その当たり前の奇跡の前でなす術もない。

どこまでも続く海を見ていると、気が遠くなる。
自分がここに立っていることに驚く。

いろんなことがあったけれど、みんなすーっと消えて行く。
考えも感情も残らない。

小さな小さな自分や社会を気にして生きるか、
目の前にある無限に謙虚に耳を傾けるか。

遥かに深く大きなものがある。
それを見るためには自分というものを捨てるしかない。
何も知らない、何も見えていない、という自覚だけが感じる力を高めてくれる。

すべての感覚が開き、無限に包まれ、目にする全てが新鮮に輝く。
気持ち良く生きよう。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。