2015年2月13日金曜日

アラヤシキの住人たち

疲れたので早めに寝ようかな、と思いつつも音楽を聴きながら色々考えていた。
今日のうちに書こうかな、と思う。

今週は来客続きだった。
お仕事のお話もあるけれど、どちらかというと視察というか、
他の施設の方がアドバイスを求めに来られることが多くなった。

アトリエの場合、やっぱり福祉とは方向性が違う、と言う部分は
これは良い悪いではなく認識として共有しておいた方が理解しやすい。
エッセンスはどんな場においても使えるとは思うけれど。

福祉には福祉でしか出来ないことがあるし、
アトリエにはアトリエにしか出来ないことがある。

僕のことを福祉や他団体に批判的だと解釈する人もいるけど、
決してそんなことはない。ただ単に同じにしてはいけないというだけだ。
例えば、しょうぶ学園、アトリエインカーブ、浦河べてるの家、
それに共働学舎なんかは良い活動をしていると思っているし、
社会に良い影響を与えていると思う。

それでも、手放しで良いとは思わない。
もし思っていればわざわざ他の活動はしていないだろう。
僕は僕なりにもっとこういう部分が大事じゃないのかな、
というところを実践している。

共働学舎の宮嶋信さんと久しぶりに会った。
相変わらず突然来て泊まって行ったのだけど。
楽しかった。いっぱい話すことが出来た。
そして、信さんはしょうもない人でもあるけど、
未だに僕にとっては尊敬出来る方だと思った。
まあ、あんまり言いたくはないけれど、僕の師匠だ。(ちょっとだけ情けないが)

前置きがずいぶん長くなってしまった。

共働学舎が映画化された。タイトルは「アラヤシキの住人たち」。
5月1日にポレポレ東中野で公開されます。
なるべく多くの方に見て頂きたいです。

僕は試写会に行って来ました。
久しぶりの渋谷。ユーロスペースは場所が変わってから数回しか来たことがない。

実は書くべきか迷っていた。
何故なら客観的に見れてはいないだろうと思うので、
正当に判断出来ないのではないかと。
でも、もう客観的な判断を書くことは諦めた。

僕の主観で書かせて頂きたい。
素晴らしかったです。
学舎を知らない人が見たらどんな風に見えるのか、僕には全く予想は出来ない。
でも、多分何かが伝わるのではないだろうか。

少なくとも作られた感じの嫌らしさ、わざとらしさは全く無かった。
自然だった。

思い入れが強いだけに、変な風に解釈されてないか、誤解されないか、
見てみるまで怖かったし、
もし違和感があったら伝えるつもりだった。
良くなければ批判しなければならない、と覚悟していた。

大丈夫だった。なつかしい共働学舎の姿がそこに映っていた。
とてもあたたかくやさしい世界が広がっていた。
もっと勢いがあった時と比べると落ちる気もするけど、
やっぱり信さんの存在感も良かった。
メンバーのみずほさん、えのきどさん、くにちゃんの雰囲気も充分伝わって来る。

特にみずほさんとえのきどさんが中心に撮影されていて、
この2人の面白さがを見てもらえることが本当に嬉しい。
この人達は全く変わっていない。

僕の原点の風景でもあることを改めて教えられた。
自分の仕事の中のどこまでが共働学舎から来ているのか、
親方(宮嶋先生)や信さんから来ているのか、
どこからが僕の部分なのか、確認することが出来た。
素晴らしいなあ、これだなあ、と思う情景までが共働学舎から学んだ部分だ。
そして、そこもっと掘りたいなあ、もっと深めたいなあ、と思う部分、
それが僕が追求して来たところだろう。

僕だったらくにちゃんやえのきどさんやみずほさんは、
ああいう部分から先にもっと面白くて凄い部分が見えている。
見えているからそこに触れたいし、人にもその姿を見て欲しいと思う。
その結果が僕の入る現場になる。

あったかい、やさしい、みんな仲良し、そうだけど、
僕ならその先を一緒に歩きたい、それぞれのもっと深くカッコいいところを見たい。

とはいえ、感動したことは確かだ。
信さんが自分一人でひっぱるということをしないで、
ひく場面をしっかり弁えているところが流石、と思った。
あのバランスが信さん。

みさきさんの存在が素晴らしくて、
こういう人に一緒に居てもらえて幸せだったと思い出した。
希有な人だ。

同時にあまりに悲しくて涙が出た。
そこにいたはずの山岸さんがもうこの世にいないこと。

片山さんもたくみさんものぶちゃんも亡くなってしまった。

あの頃あったほとんどのものは消えていった。
沢山居た人達もそれぞれ去って行ってしまった。
もうあの頃の共働学舎は存在していない。
勿論、それは何も学舎だけのことではない。
この世に存在するすべてのものがやがては消えて行くのだから。
変わって行くことを恐れてなどいない。
昔の方が良かったという言い方もしたくない。
ただ、寂しさ悲しさという感情からは逃れられない。

あの場所がこの世のすべてだった時代があった。
たくさんの人に出会った。
愛し合ったし、傷つけ合った。
それぞれが人生の大切な時間に自分のすべてを賭けて向かい合った日々。

懐かしいなあ、と思う。
それでも、振り返っている暇はない。
僕はそれ以上のことを実行するためにここに居る。

あの頃から言い続けて来たこと、僕は約束を守っている。
誰が忘れたとしても。
ついつい個人的な感傷に浸ってしまいました。ごめんなさい。

良い映画だと思います。
是非、おすすめしたいです。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。