2015年7月31日金曜日

ブルームーン

ずっと月を見ていた。
明日から夏の制作。連続でアトリエが開かれる。
どんな時間になるだろう。

いつだってそこに行けば、最高の時間がある。
場は決して裏切らない。そんな仕事をしたい。

ずっと憧れて来た場所がそこにある。

映画を見に行く。寄席へ行く。
祭りに行く。
そこにはいつでも夢があって、何か違うものが見られた。
見ている時間だけが全てを忘れて夢中になれた。

良い店や、旅館やホテル。

うっとりさせてくれる多くのもの。

人ってこんなに凄いんだ、こんなに素晴らしいんだ、と感じさせてくれる瞬間。

二進も三進も行かなくなって、どうすることも出来ない人達。
どこかで大逆転が起こらなければ嘘だと感じていた。

教えてくれた人達の傍へ行きたい。
楽屋裏でありスクリーンの向う側。
そこでは日々、汗と涙が流される。

場を見つけた時、僕はこれで行こうと思った。
たまたま、むいていた。センスもあった。必要な才能もあった。
その上で誰よりも努力を重ねた。
沢山勉強して、沢山練習して来た。

こころの深い部分での安心を持ってもらいたい。
満足して帰って欲しい。今までの自分よりもっと自分らしくあれるように、
その時間の中でリズムを見つけて欲しい。
そのためなら自分の命を削ってもいい。

どんな時でも美味しいものを作って、お腹いっぱいにして帰してあげられるように。
仕込みをした。準備をした。

喜んでもらえることを幸せに思う。

だから自分を裏切ることが一番出来ないことだ。

精一杯の、掛け替えのない場が目の前にある。

書いている人

アトリエ・エレマン・プレザン東京を佐藤よし子と 夫婦で運営。 多摩美術大学芸術人類学研究所特別研究員。